8月25日(金)

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8月25日(金)

それから月日は流れ、いま僕は小さな出版社に勤務している。 仕事のほとんどは出版物の校閲だ。 書かれていることが事実かどうかをチェックし、間違いがあれば赤い線を引いて修正を入れる。 大きな間違いの場合は著述家(昔は”作家”と呼ばれていたらしい)に確認し、事実だと確認できる記述に直してもらう。 量は少ないが挿し絵などのチェックも同時におこなう。 これは描写家(これも昔は”画家”などと呼ばれていた)がもとの写真を一緒に送ってくれるので、絵と見比べて間違いがないかを確認する作業だ。 ごく稀にもとの写真をなくしたといわれる場合があるが、そうなるともう一度まったく同じ構図の写真を撮らなければいけない。 それはほとんど不可能なので、たいていは別の写真でいちから描き直してもらっている。 校閲はそんなに大変な仕事ではないが、神経を使うので職場はぴりぴりしている。 もしフィクションを出版してしまえば、著述家や描写家が犯罪者になってしまうし、会社も違法品を出版したことになってしまうのでおおごとだ。 僕はこの仕事をわりかし気に入っている。 昔から身体を動かすことは嫌いだったし、歴史の本をよく読んでいたので細かい文字を追うのには慣れている。 ただ難しいのは絵の修正の基準で、物の大きさが少しもとの写真と違うだけでもフィクションになってしまう場合がある。 そのため絵にはかなり細かくチェックを入れていくことになる。 出版してしまってからでは遅いので、神経質になるのもやむを得ない。
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