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仕事を終えた僕はそのままKの部屋に向かった。
途中コンビニに寄り、缶チューハイを6本ぶらさげながら部屋に到着する。
いつものように鍵のかかっていない玄関を開けて中に入る。
「きたぞー」と声をかけながら靴箱や紙袋で散らかった廊下を抜けていく。
部屋に入ると、Kは壁掛けの巨大なパソコンモニターの前で、イスから前のめりになって画面を凝視している。
「適当にやってて」とこちらを見もせずに言う。
僕はベッドの縁に腰掛け、机の上のゴミをまとめて片付け、机の下にあったポテチの封を開けて、1本目のチューハイを飲み始めた。
部屋の中は乱雑で、ベッドの枕元にはなぜか真っ青にデコレーションされた小型ドローンが置いてあったりする。
Kは身じろぎせずに画面を見つめている。
モニターに映っていたのは細かい模様のようなもので、テレビの砂嵐を一時停止したものにも見えた。
その模様を上下左右に動かしながら、なにかを読み取ろうとしているようだった。
僕が2本目の缶を開けると、ようやくKがこちらを振り向いて言った。
「どう?順調?」
なにがだ、と思いつつも「まぁそこそこ」と適当な返事を返す。
「空想表現のテロのこと知ってるだろ?」
「そりゃな、こっちはみんな苛立ってぴりぴりしてるよ」
「あのビラ手に入れた」
「は!?」
「これ」と言いKは、巨大なスキャナーから1枚の紙を取り出し僕の目の前に突き出した。
「ヤバいだろ、捕まるぞ」
そう言いながらも僕はその紙に描かれた”フィクション”から目が離せなかった。
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