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プロローグ
この世界であらゆるフィクションが禁止されたのは、
僕が生まれる20年以上前のことだった。
当時はインターネット全盛期。
あらゆる人々が自ら情報発信するようになった時代だ。
大統領や政治家、有名人やアーティストはもちろん、今まで名前も知られぬ一般人だった人々も、SNSを自分のメディアとして情報発信ができるようになった。
その頃から「メディア リテラシー」という言葉が盛んに使われるようになった。
情報発信が簡単になることで、ニセ科学のような信憑性の低い情報や、フェイクニュースと呼ばれる事実無根の情報がそこら中に溢れるようになってしまった。
そこで事実か嘘かを見抜く能力が大切だといわれるようになり「メディア リテラシー」という言葉が掲げられるようになったのだ。
しかしそうした議論も空しく、その時代の人々はなにが事実でなにが嘘かなんてことをほとんど気にしなかったという。
コンビニで弁当を買うときに、いちいち成分表示を確認する人がどれだけいるだろうか。
その味が食材本来の味でも、添加物の味でも、食べてうまいと感じられればそれでいいと思うんじゃないか。
人々はそんな風に、正確な情報よりもおいしい情報を選ぶようになっていった。
事実だとか嘘だとかを気にするのは一部の「情報オタク」だけになった。
やがて、どんな情報を選ぶかは個人の自由だと言われるようになる。
そうして嘘も事実も関係なく、好きか嫌いかで情報が選ばれる時代ができあがっていった。
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