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「…ふう」
軽く息を吐き、つい今しがた読み終わった本を机に置く。
私が読んでいたのは、恋愛小説。
女子高生のヒロインは、隣の家に住む幼なじみの男の子に、ずっと前から片想いしていた。ライバルが現れたりすれ違ったりと、たくさんの壁がふたりの間に立ちはだかるけれど、最後には告白して実は両想いで、終わり。
はい、ハッピーエンド。
こういう話は好きだ。というか、嫌いじゃない。
だって、夢を見ることができるから。
現実には、こんな純粋な恋なんてない。
きっと恋をしたら、欲望ばっかり増えていって、自分の汚れた心にも相手に想いが届かないことにも嫌になって。
結局、諦める。
もし実ったとしても、いつまでもきゅんきゅんできない。相手の知らない一面に驚き、絶望し、冷めていく。
なんてまあ、初恋が小学二年生で、それ以降恋愛とは縁のない私が語るのも、あれだけど。
とにかく、小説のような恋なんてないんだから。
本の中だけでも夢を見たっていいよね、って話。
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