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出会って以来、毎日、あまり長くもない昼休みに僕を呼んでは歌を聞かせるようになっていて、次第に学校外でも会う頻度は増え、よく話すようになった。
いつしか、家が近かったことも知り、登下校を共にするようになり、気がついた頃には家族ぐるみの付き合いもするようになっていた。その時点で僕と彼女の距離感はただの友達とは言い難い。
僕は趣味で小説を書いていたと言うこともあり、文芸部に入っていた。が、そこはオタク部と言ってもいい程に適当で、活動という活動はしていない。僕も基本的に家で執筆しており、慣れてきた頃には部活の出席簿に丸を付けると、彼女のいる合唱部に遊びに行くようになっていた。
二ヶ月も経った頃には二人で海にも行った。記念写真って言ってツーショットで撮った事もあったっけ。とても気恥ずかしかったことと、彼女の最高の笑顔だけは鮮明に覚えている。
そんなことが続いていたある日の放課後に、出会った時のことを聞いた事もあったっけ。
「そういえば、何で僕の事を知っていて、何で僕の好みを知っていて、何で僕に声を掛けたの?」
「ん? あ、えっと……わ、私って世話焼きでね。元気のない子を見ると声を掛けたくなっちゃうんだ。それに一年生の頃、同じクラスだったし、その時に君を見ていてどんな趣味しているか知ったの」
おい、流石にそれはまずい。ていうか、そんなにモロバレだったのだろうか。
流石にちょっとした焦りを覚え、軽く苦笑いをしてみた。
「どんな人が好みなのかも、どんな本を読んでいるかも。あと、好みの胸の……」
「ストーップ。それ以上は止めよう。ていうか、なんでそんな分かってるの? その観察力、最早キモいと思うが」
「ちょっ、キモいはないでしょ。って、翔太君に言われても……」
「うん、ストップ」
そうやって笑い合った。
「ま、そんなとこ。それで今日はもっといい曲を用意したの。いい?」
「うん、お願い」
空気の振動は美しい波を描き、体へと染み込んでいく。でも、どこか儚げな曲だ。悲しくも、寂しくもないのに、何処か儚い。
なんて、聞き惚れていたら、曲も終わった時に涙が一筋溢れる。
「泣いて……って、そんなに酷かった?」
「い、いや、感動しただけ。でも、相変わらず凄いな。それって本当に自分で作ったの?」
「そうだけど……。あんまりだった?」
「そんなことはないよ。僕は凄く良いと思う」
「ホント?ありがとう!」
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