僕が贈るアイ

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 八月十四日、突然僕の携帯が鳴った。おそらく電話だろう。  すぐに応答しようと画面を開くと、そこには彼女の電話番号が表示されている。でも、どうして。 「あ、もしもし、秋月 翔太くんのお電話でよろしいですか」 「はい、そうですが……」 「良かった。久しぶりだね」 「え、あ、はい」  その声は彼女の母親のものだった。でも、何処か震えている。 「もし良かったらなんだけど、あの子がね、最後に会いたいって」 「え?」 「お金は後で出すから、来てくれないかしら? 無理なら、そう伝えておくけど」  もうその言葉を聞き終える前には、何も考えず口が動いていた。 「何処に行けばいいですか?」 「△△市にある医療センターというところなんだけど」 「分かりました」 「来て、くれるのね」 「はい」 「分かった。入り口で待ってるわ」 「ありがとうございます」  電話を切ると、家を飛び出し、自転車を必死に漕いだ。向かう先は駅。次々と現れる風景を置き去りにしながら、とにかく急ぐ。駐輪場に自転車を押し込むと、走りながら改札を通り抜けた。階段を一段飛ばしでエスカレーターよりも速く登って行く。閉まり始めたドアを何とか擦り抜け、電車へと乗った。  心はとにかく慌てている。何故かは分からないが、とても急いでいた。  そのせいか、一駅一駅止まって乗降するのですら、腹立たしく思えてしまう。  人の密集など微塵もない電車に揺られる事、一時間半。ようやく駅に着いた。  扉が開いた瞬間、出来る限りの力を振り絞り、ホームを走って行く。何人も追い越し、改札を通ると、南口と書かれた方の階段を降りた。  シャッターの降りた居酒屋を横目に、ロータリーを抜け、車通りの少ない大通り沿いを進んで行く。医療センターと書かれた看板を見つけると、そっちへ向かい、住宅街に入って、幾度か道に迷いそうになるも、何とか到着した。
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