若き葛藤の書

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「お前が欲しい」 噫散り散りになる 花のようなお前 天から落下する花嫁のようだ 麗しい口から真理が零れていく 物言わぬ岩の隣で晴れやかな衣装を凝らし お前は――言ってくれ! 俺を愛した! と 憂愁の果てに生まれる(ウイ)の声 俺を導く美しい彫刻の手 お前は何と移ろいやすい女か 俺を蝕む病巣を根絶する お前の声 切ないこだまのようだ 繊細な手は 口は 足は 崩れていく数理よりおぞましい お前 お前 お前 恋い焦がれている! 俺はお前の愛の言葉に うねっていく 欲望が 俺の欲望が 沈黙に安寧を見出し 夢の鍵を握るお前の足元の猫は まどろみ朽ちていく幻のようだ 噫 究極の自然がお前を形成する 俺は這いつくばって絶望を生きた ますます美しくなるお前を見て 殺したくなるほど切なかった 赦してくれ 俺を (せめ)ぎあう俺の魂の海を見つめてくれ 俺のそれは麗しくうねっている 俺は俺の魂を失うかもしれない お前の手によって 幻よりも美しく お前は目の前で消える 刹那の愛情も失われていく 古の詩が時代と共に輝くように お前はそこにいるのだ 獰猛な俺の魂のうねり 殺人の季節を夢に見る悪魔のように 俺は俺をひねり殺すかもしれない ただ閃光の春を生きるお前は 悲しい道化のようにさめざめと泣いている 綺麗だな星は あそこで獣が()いている ただ俺は打ちひしがれ しおれていく薔薇より切ない 物悲しい声を置いていった俺は お前に捧げる 黄金のオードを 万物を揺する皇帝のように 俺は君臨したい 世界を手の平に 世界は――存在しない世界はこぼれていってしまう
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