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美沙は、育児に悩んでいた風でも友達がいなかった訳でもない。
嫁姑問題もなく仲は良かった。三人目が生まれるからと、美沙から同居を提案されたくらいだ。
夫婦仲だって。会話も喧嘩もするけど、親に子ども達を預けて二人の時間も作ってた。
何か不満があったようにも何かに絶望していたようにも思えない。
なのに美沙は逝ってしまった。
俺らが汲み取れなかった「何か」が美沙に死を選ばせた。何度考えても答えは出ない。
美沙が確かに生きていた。今となってはそれだけが真実。
「生きてたら良いこともある」なんて軽々しくは言えない。
我を忘れるほど怒りに震える時も、
心に穴が開くほど辛く悲しい時も、
のたうち回りたいほど悔しい時も、
身悶えるほど恥ずかしさを感じることもある。
──埋まらない空虚感に絶望することも。
辛いことも、生きているからこそ。
努力が報われる達成感も、
誰かにもらった優しさが心に灯す温かさも、
心を震わせる感動を感じることも、
小さな我が子達の成長を感じることも。
喜びだって、生きているからこそ感じられるんだ。
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