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『浩司、大丈夫か?』
「……」
『母さんが救急車に乗った。敬一伯父さん達に子ども達を預か……もら……小学校と幼稚園に迎え……頼んで……警察にも……』
親父の話は続いているのに、水底のように音が徐々に遠のいた。
『浩司聞いてるか?』
大きな声で呼ばれて我に返る。
「親父悪い。帰ったらもっかい教えて。急いで帰るから。」
『分かった。気を付けて』
親父の言葉を最後まで聞けずに受話器を置いた。
小刻みに震える手を握り締めた。
──落ち着け。
「浩司大丈夫か? 顔真っ青だぞ。」
店長が心配そうに聞いてきた。
「嫁が。」
「奥さんが? 何かあったのか?」
「救急車で運ばれたって……」
俺と店長の会話を聞いている他の社員の顔にも緊張が走った。
「さっきの救急車か! 早く帰ってやれ。明日も休みでいいから、あとで連絡な。」
「すいません。必ず連絡します!」
店長の厚意に甘えて、店を飛び出した。
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