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運転席に座った時、美沙からの不在着信に気づいた。何か俺に言いたかったのか?
今日に限って、受付席のために早めに昼休憩に入ったのが悔やまれる。
今は一刻も早く帰らなくては。運転に意識を集中させた。
家に着いたら親父が玄関前にいた。親父の運転で病院に向かう道すがら、経緯を聞いた。
母さんが発見した時微かに息があったから慌てて救急車を呼び、外出中だった父を呼んで美月を預けて、自分は救急車に同乗した。
父さんは敬一伯父さんに連絡して子ども達を預けるように頼み、美沙の実家と俺の会社に連絡した。
「奇跡的に一命を取り留めた」そんな奇跡を願って病院に到着した。
玄関の自動ドアから入った俺達を見て、母さんはロビーの椅子からすぐに立ち上がった。
「……っ。」言葉にならない声を発して、母さんがハンカチで口元を覆った。
「美沙ちゃんは?」
親父の声に、目からぶわっと涙が溢れた母さんが首を振った。
願った奇跡が起きなかったことを悟った。
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