両家ご挨拶 ②仁科家

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「私も好きですよ!」  腕ごとギュッと抱きしめてから、照れ隠しも兼ねて車へダッシュした。  へへへっ。きっと私がいきなりハグしたから放心してるんじゃないかな、と後ろを振り向いたら、陸上選手並みの速さでこちらに走ってきているし、動揺した私は容易く捕獲されてしまった。  抱きしめられたと思ったら唇を何度も奪われた。  息が苦しくてふらつけば、私を腰から持ち上げ車のボンネットに乗せ、またキスの嵐。  やっと唇が離れた時には、お互い息が乱れていた。 「すみません。今日は、朝から緊張してて、藤子さんにあまり触れられなかったので、我慢できませんでした」 「大丈夫です。こ、こういうのも好きです…」  くぅ、言った後に猛烈に恥ずかしくなってきた。  目を合わせられなくて向こうの門の方を見たら、警備員の小林さんが口をポカーンと開けながらこちらを見ている事に気がついた。  今の……見られてた?  蒼真さんも気付いたようだけど、私みたいに赤面することはなく「もっと見せつけるっていうのはどうでしょうか!」と興奮気味に訊いてくるから全力で拒否した。    なにはともあれ、仁科家へのご挨拶は無事に果たすことができた。  仁科さん一家は温かくて楽しくて思いやりのある人達だ。それに蒼真さんが気付くのは、もう少し後の話。   ———仁科家 完———  たくさんふざけてしまいましたが、最後まで読んでくださり、応援してくださった読者の皆様、本当にありがとうございました。    
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