27442人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
「私も好きですよ!」
腕ごとギュッと抱きしめてから、照れ隠しも兼ねて車へダッシュした。
へへへっ。きっと私がいきなりハグしたから放心してるんじゃないかな、と後ろを振り向いたら、陸上選手並みの速さでこちらに走ってきているし、動揺した私は容易く捕獲されてしまった。
抱きしめられたと思ったら唇を何度も奪われた。
息が苦しくてふらつけば、私を腰から持ち上げ車のボンネットに乗せ、またキスの嵐。
やっと唇が離れた時には、お互い息が乱れていた。
「すみません。今日は、朝から緊張してて、藤子さんにあまり触れられなかったので、我慢できませんでした」
「大丈夫です。こ、こういうのも好きです…」
くぅ、言った後に猛烈に恥ずかしくなってきた。
目を合わせられなくて向こうの門の方を見たら、警備員の小林さんが口をポカーンと開けながらこちらを見ている事に気がついた。
今の……見られてた?
蒼真さんも気付いたようだけど、私みたいに赤面することはなく「もっと見せつけるっていうのはどうでしょうか!」と興奮気味に訊いてくるから全力で拒否した。
なにはともあれ、仁科家へのご挨拶は無事に果たすことができた。
仁科さん一家は温かくて楽しくて思いやりのある人達だ。それに蒼真さんが気付くのは、もう少し後の話。
———仁科家 完———
たくさんふざけてしまいましたが、最後まで読んでくださり、応援してくださった読者の皆様、本当にありがとうございました。
最初のコメントを投稿しよう!