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「え、昨日も貰いましたよ…。防犯ブザーを」
「一人暮らしの藤子さんにはあれだけじゃ足りませんから。その青い缶は催涙スプレーです」
青い缶を掴み取る。小さめで持ち易い。
「催涙スプレーってあれですよね、顔に向けてシャーってやる…」
「はい。これは液状タイプなので噴霧タイプより狙い易いです」
「はあ…。この黒い棒はなんですか?」
二十センチ程の黒い棒。先端に丸い小さな玉がある。
「それは護身棒です。相手の急所を狙って突くんです」
「あ、そう言えば警察官がこんなの持ってますよね」
「はい。で、その黒いのがスタンガンです」
「スタンガン!?」
なんて物騒な!
「これは持ち歩くと法的にアレなので自宅に置いてください。いざ、という時だけの使用で」
「はい…」
本物を見た事すら初めてなのに、自分が持つことになるなんて…。
「あと最後が補助錠です」
「頑丈そうな作りですね…」
「はい。主錠だけでは心配ですので。このアパート古いし」
いや…合鍵作ってた人が言うのそれを?
引きつり笑いを浮かべたら、仁科さんは目を逸らして困ったように笑う。
「女性の…、ましてや藤子さんのように綺麗で可愛らしくて華奢な方の一人暮らしですから用心するに越した事はないと思います。大事な藤子さんが犯罪に巻き込まれて欲しくないですから」
口がポカーンと開いてしまうのは、どの口が言ってんのじゃという気持ちと、褒めちぎられた照れからで。
「って、…僕が言うのは間違ってますけど…」
あ…、一応自覚はあったんだね…。
「とにかく、これから………是非活用してください」
「はい……ありがとうございます」
心苦しそうな表情が気になるけど、おずおずと頭を軽く下げた。
こんな贈り物は初めてだ。
防犯グッズを元ストーカーにもらうなんて。
その後、紅茶を飲みながら私達は談笑して部屋に戻った。
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