186人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
電車に乗りながら、思い出すのはアサギさんの仏頂面とムカつく発言ばかりだった。
本当、デリカシーってものが無かったな。結局最後まで名前も呼んでくれなかったし。ああ、なんかイライラしてきた。
こんなに私をイライラさせてるくせに、あっさり忘れちゃうっていうの?
そんな馬鹿な話はない。忘れてやるもんか。
私は鞄の中からスマートフォンを取り出すと、メモ帳アプリを開いた。こんな事に意味がないのは百も承知だ。だけど私はアサギさんの悪口をただひたすらに綴っていく。我ながら馬鹿なことをしていると思うけど、何もしないなんて出来なかった。
ムカつく。ムカつく、ムカつく。
「ああ……もう、忘れたくないなぁ」
独りでに呟く。もちろん答えは返ってこない。
電車にのってしばらく時間が経った。
「あれ……なんで私、電車に乗ってるんだっけ?」
その時、雨はもう上がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!