10 ありがとう、ごめんなさい、さようなら

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 電車に乗りながら、思い出すのはアサギさんの仏頂面とムカつく発言ばかりだった。  本当、デリカシーってものが無かったな。結局最後まで名前も呼んでくれなかったし。ああ、なんかイライラしてきた。  こんなに私をイライラさせてるくせに、あっさり忘れちゃうっていうの? そんな馬鹿な話はない。忘れてやるもんか。  私は鞄の中からスマートフォンを取り出すと、メモ帳アプリを開いた。こんな事に意味がないのは百も承知だ。だけど私はアサギさんの悪口をただひたすらに綴っていく。我ながら馬鹿なことをしていると思うけど、何もしないなんて出来なかった。  ムカつく。ムカつく、ムカつく。 「ああ……もう、忘れたくないなぁ」  独りでに呟く。もちろん答えは返ってこない。  電車にのってしばらく時間が経った。 「あれ……なんで私、電車に乗ってるんだっけ?」  その時、雨はもう上がっていた。
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