友達以上、恋人未満

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友達以上、恋人未満

「CLOVER」を出たふたりは、近くのカフェに来ていた。 「就職おめでとう!よかったね」 和希が笑顔で美穂に言った。 「ありがとう・・・こんなにすんなり決まるとは思わなかった。カズキくんのおかげよ」 「いや・・・僕は店を紹介しただけで・・・店長と相性よさそうだね」 和希は美穂の心の支えになってくれてたのだ。本当にありがとう、心でもう一度和希に言った。 「店長さん、いい人みたいだね。クローバーの花言葉、復讐、の解釈がステキだった」 「惚れた?」 「うん」 ふいに、和希がそわそわとした仕草をし始めた。。 「惚れた、につながる話なんだけど・・・僕の今の君に対する気持ちはね・・・」 どきんっ!美穂の心が高鳴った。 「友達より大切な・・・でも、愛しているかどうかは正直、よく分からない、ってとこなんだけど」 ぽりぽり。和希は頬を中指で掻いていた。なんとなく、美穂はホッとしていた。ここで告られても応えられない。まだ、「恋人」を作る準備が出来ていない。和希が続けて言う。 「だから・・・わがままだとは思うんだけど、今まで通りメールしたり、今日みたいに会ったりしてほしいんだ」 「もちろん!私も、カズキくんのことは『友達以上恋人未満』って感じなの。好きは好きなんだけど、友達の好きなのか、恋人の好きなのか、私も判断できない。すこしずつ知り合って行って、いつか恋人になれたら素敵だな、って思ってた」 和希がホッとした笑顔をみせた。この人のことを愛せるだろうか。好き―友達以上の気持ち―はある。あと、プラスアルファ、何が必要なんだろう。時間、もあると思う。今も拓也のことを想ってしまう、瞬間がなくなれば・・・。 「そろそろ、出ようか?夕食はご実家でたべるんだよね。就職の報告もしなきゃだろうし」 「うん。つきあえなくて、ごめん」 「いや・・・今日は疲れただろうし。送ろうか?」 「ううん・・・カズキくんはここからすぐでしょう?いいよ。駅まで送ってくれる?」 「ああ」 新桜台の駅に着いて、別れの時。 「今度は映画でも観ようよ。観たい映画、考えておいて。それから、夕食もいっしょにしよ!」 「わかった。じゃあ、ね」 「じゃあ、気を付けて」 階段の下まで降りて振り向いたら、まだ和希は手を振っていた。 カズキくんは本当に優しいし、私のことを想ってくれる。この人のことを愛せたら・・・きっといつか、愛せる、よね?
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