カズキくんと坂上店長の過去

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カズキくんと坂上店長の過去

「ちょっと早く着きすぎちゃったかな」 火曜日。時計を見ると9時を少し過ぎたところだった。 「従業員入口」のドアを押すと開いた・・・ということは、誰か先に来ている、ということだ。 「あら、和泉さん、早いのね」 「おはようございます、坂上店長。店長こそ・・・何時にいらしてるんですか?」 ふっ、と笑って、店長は答えた。 「9時少し前かしら。私は店長だからね、開店の1時間前には来ているの」 「すっ、すみません。今度からもっと早く来ますね」 「いいのよ、本当に。今日も、9時半でよかったのに、気を使ったんでしょう。そういうところ、和希くんに似てるわ」 ・・・って言うか、見習ったんだけど、とこっそり美穂は思った。 「じゃあ、ここのケーキを並べてくれる?全部で12種類」 「はい」 「ところで、和希くんとは付き合い長いの?」 びっくりして、ケーキを落としそうになった美穂だった。 「あ、あの。つきあっているわけじゃなくて・・・友達以上恋人未満、っていうか。メールから始まって、会ったのはこのあいだが初めてだったんです」 「そうなの。あまりに2人がお似合いだから、焼いちゃった」 「焼い・・・?」 「和希くんとは、2年前に終わっているんだけどね」 「・・・」 「あ、気にしないで、付き合ってくれて、全然大丈夫なの。未練があるとかじゃないから」 そういう店長の瞳には、涙が光っていた。あぁ、この人はまだ、カズキくんを忘れてない。 「もしよければ、教えてくれませんか?2人が終わった理由(わけ) 坂上店長は、少し躊躇してから話し出した。 「結局は、年齢差かな。私、今、38歳なのね。結婚も考えてたんだけど、和希くんのご両親に大反対されちゃって・・・和希君はそれでも好きだ、って言ってくれたんだけど、私から身を引いた・・・少しずつ会う間隔を広げて行っているうちにね、私を好きだ、って言ってくれる人に出会って。逃げたのね、私。その人とは、うまく行ってるけどね」 最後に坂上店長はウィンクした。 「結局、和希くんとは縁がなかったのね」 ちょっと淋しそうに坂上店長はつぶやいた。 「さぁ、仕事、仕事!!カフェコーナーの説明をするわね」 何かを振り切るように、店長は言った。
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