人生の転機?

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人生の転機?

今日、美穂は職安に来ていた。27歳、資格は簿記一級のみ。 「前の職場を辞めた理由は何ですか?資格を生かせる、最高の職場だと思うんですが」 まさか、男にフラれて、やけになって辞めたとは言えない。 「ちょっと、人間関係でいざこざがあって・・・」 「それは、あなたにも原因があったのでは?他で勤めても、同じようなことになるかもしれませんよ」 きつい言葉。美穂は唇を噛んだ。 「セクハラがあったんです」 「だったら、訴えるなり、なんなり、すべきでしたねぇ。ただ辞めるというのでは・・・。それに、27歳でしょう?その年齢で正社員、というのは、かなり難しいですねぇ」 なにもそんな言い方をしなくても。 「分かりました。もう、いいです」 がたんっ!と立ち上がって、足早に立ち去った。 公園のブランコで、返された履歴書と職務経歴書を見ていたら、涙が出てきた。 「あ~あ。派遣にでも登録するかなぁ・・・?」 とつぶやくと、メールの着信音。カズキくんからだ。 【こんにちは】 【いずりんちゃん、こんにちは。こっちは今、昼休み。お昼はもう食べた?12時半くらいになったら、返信できると思うから、ちょっと話そう。 カズキ】 カズキくんに愚痴ってもいいものだろうか。愚痴、じゃなく、相談、だったらいいよね。 【Re: こんにちは】 【カズキくん、こんにちは。ちょっと嫌なことがあって、落ち込んでます。話、聞いてくれますか?】 【Re:Re:こんにちは】 【嫌なことって、どうしたの?僕でよかったら、話、聞くよ。メル友だけど、いずりんちゃんは僕の大切な友達だよ】 ボクノタイセツナトモダチ・・・その言葉をゆっくりと反芻した。友達、そう、友達なんだよね。 美穂は、今日起きたことをかいつまんでメールした。どんなに傷ついたか、も。派遣に登録するかどうか悩んでいることも。 【提案だけど】 【それはショックだったね。担当した相手も悪かったと思う。職安の人もそんな人ばかりじゃないと思うからさ。でもさ、僕にメールくれたことは、ひとつのチャンスだと思うよ。いずりんちゃん、ケーキ作りが好きだって言ってたよね?僕の知り合いのケーキ屋が売り場の正社員を募集してるんだ。ケーキを作るわけじゃなく、ケーキを並べたり売ったりするだけだけど、ケーキを作るところを見たりも出来るしケーキに囲まれて働くのはいずりんちゃん、嬉しいんじゃないかな、って。僕の勝手な思い込みだけど。興味があったら、夜、メールして。  カズキ】 え、ケーキ屋さん。美穂の小さいころの夢は、ケーキ屋さんになることだった。そんな夢がこんな形で叶うかもしれないなんて。知り合ったばかりのカズキくんに職を紹介してもらってもいいのかな?でも、これは、あたしの人生の転機だ。
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