すねこすりカフェで働きませんか?

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■■■ すねこすりカフェ『すねっこぐらし』。どこかのおうちのリビングみたいな作りのカフェで、すねこすりは十体ほど。土日を中心に営業。メニューはドリンクのみ。事前予約制で時間制限有り。そして男性のみの来店はお断り。開店したばかりなのでそんな感じでやっているらしい。 私がやるバイトはとにかく掃除だった。すねこすり、わかっていたけど毛の量がすごい。すねこすりカフェなので多少の毛が服につく事は仕方ないけれど、お客様が出入りするたびにコロコロをしなくてはいけなかった。 本当はすねこすりにもっと直接関われる仕事がいいな、なんて思っていたけれど、それは飼育資格の持つ店長に任せるしかない。それでもたまに、暇したすねこすりが気まぐれにこすってくるのだから幸せだ。 「朝日奈さん、さっきみたいにカップルの男の方がすねこすり達に危害を加えてても注意しなくていいから」 ドリンクを運び終えてから、店長が注意をしてきた。注意するなという注意だ。でもすねこすりを変な掴み方で持ち上げたり、追いかけ回したり、すねこすりが嫌がる事をするのはマナー違反で店員の私が注意しなくてはならない。 さっきのカップルは彼氏の方がすねこすりの首根っこを掴んで持ち上げて、そのまま写真を撮ったため注意したのだ。 「え、でも、あれどう見てもすねこすり達嫌がってたじゃないですか」 「嫌がってたけど、危ないから。ああいう奴は自分より下の立場に強気に出て、彼女にいいところ見せてるつもりなんだよ。すねこすりに標的にして、次はそれに文句を言ってきた店員を標的にするかもしれない」 確かにそんなかんじだった。あのカップルは彼女が『やめなよ』と止めてくれたからやめてくれたようなものだ。私の注意なんて無意味だったし、もしかしたら私に怒りを向けたかもしれない。 「そういうのは俺に言ってくれればいいから。そうしたら向こうもヒートアップせずにすむ」 「でも、」 「すねこすりも大事だけど、働く人も大事だよ。俺なら多少の事は大丈夫だから」 店長は優しい。私がバイトだからとなんでも仕事を押し付けようとしない。多分、この人は私がすねこすりを嫌いにならないようにしてくれているのだろう。せっかくすねこすりが好きで働き出したのに、すねこすりが原因で嫌な思い出が増えたらすねこすりごと嫌いになってしまうから。店長はため息をつく。 「本当は男性のみのお客様もお呼びしたいところだけど、ああいうのが時々いるからな。あと時間制限あるとこに他の席の女性のお客様に絡みだすといけないし」 「ああ、スイーツビュッフェとかプリクラとか男性お断りなのってそういう理由もあったりしますよね」 「うん。でも大多数の男性はすねこすりを普通にかわいがってくれるとは思うんだけど」 「はい。いっそ男性限定のメンズデーを作って、すみずみまでチェックしないとわからない場所に告知したらどうでしょう?」 「それ、いいな」 店長の顔がぱっと輝く。めちゃくちゃ好きでないと予約を取れないようにして、その日は男性のみ入店可にする。ちょっとした思いつきだけど、気に入ってくれたみたいだ。
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