すねこすりカフェで働きませんか?

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ずっと鎖国したこの国が開国した時、ついでと言わんばかりにこの国は妖怪の存在を認めだした。 この国には千年以上昔から人間と妖怪がいて、妖怪は隠れ住んでいたけれど、開国きっかけで彼らの存在は大きく知られるようになったという。 きっと外国にも妖怪がいるから。だから開国を機にこの国でも妖怪を認めなくてはならなくなった。というのが私が歴史の授業で習った中やっと理解した内容。正直歴史は得意じゃないからそれくらいしか語れない。 それから差別や迫害など妖怪達は色々と苦労をしていたけれど、今じゃ高校の半分は妖怪になった。両親が人間と妖怪、なんていう家庭も少なくはない。 「朝日奈ぁ、お前夏休みどうすんの?」 「河野君」 河童の河野君は私の隣のクラスメイトで、今日は偶然帰り道が一緒になった。 終業式、夏の日差しはとても強く、河野君の頭の皿から容赦なく水分を奪う。しかし河野君はペットボトルの水で皿を潤わせた。 「私はバイト。高ニだし、そろそろアルバイトも経験しておきたいんだよね」 「お前悪いやつだな。うちの学校、バイト禁止なんだぞ。渡辺先生とかすげー厳しいんだからな」 意外に真面目な河野君は校則をよく知っている。確かにうちの学校はバイト禁止。でもやりたいことがいっぱいある私はバイトしたい。遊ぶ金ほしさに校則を破るつもりだ。 一応、バイト禁止の抜け道はある。同じクラスの小豆洗い、亜月さんは和菓子屋でバイトしている。家業の手伝いなら可らしい。 「そのうちさぁ、皆でキャンプとかしようぜ、川のあるとこな。本物の河童の川流れ、見せてやんよ」 「うん、それいいね」 「おー、じゃあまたな!」 河野君はバス通学のためバス停で別れた。 夏休みが始まる。始まったけれど、バイトの目星はついていない。 ああ、どこかに楽しく夏だけで稼げる都合のいいバイトないかな。 なんて思っていると、足にもふりとした感触があった。視線を下にやれば毛玉。まさかと思い、しゃがみこんでそれと目を合わせる。丸い目。毛に埋もれるようにして存在する耳。そしてすねをこするというこの行動。 「すねこすりだ!」 私はまるで幻覚でも見ているかのような気になった。だって、ずっと好きだったすねこすりに脛をこすっていただいたのだ。 すねこすり。それは人の脛をもふっとこするという犬のような猫のような妖怪。今じゃ犬派、猫派、すねこすり派と分けられるほどの人気者だ。 私はこのすねこすりが大好きで、テレビで特集されたら絶対に見る。赤ちゃんすねこすりなんて毛がぽわぽわで可愛くて、初めて人間の脛をこするシーンだなんて涙無しには見られない。 ただ、すねこすりは一般的なペットじゃない。飼育には資格が必要だ。
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