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「 」
放課後の校庭は雨。
然程強くはないものの、暫く止みそうにない。
教室の窓を開けてみる。
程なく、掛け声が聞こえて視線を落とした。
大会が近いとかで、この雨の中を走り回っている野球部の部員たち。
あぁ、そう言えば君も居たっけ。
窓の縁にゆるく両手をついて眺める。
ノックの練習だろうか、やたらと左右に踊らされている君。
その顔はとても楽しそうだ。馬鹿みたいに。
君は本当に野球が好きなんだね。
まあ、他に取り柄が無いと思うけど。
雨に濡れて、泥に塗れて、それでも構わず球を追いかけて。
ねぇ。
何が君をそんなに楽しそうにさせるの。
何で君はそんなに楽しそうなの。
たかが野球なのに。
──ほんとは分かってる。
馬鹿げてる、こんなの。
形の無いものに嫉妬してるなんて。
でも。
「 」
不意に。
目が合った刹那、君は私に向かって大きく手を振った。
まるで、今の言葉が聞こえたみたいに。
-了-
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