恐妻家

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「お前、つい最近、地元で起こった玉突き事故、覚えてるか?」 「ああ、あの高速道路の!全国ネットでやってたんで、僕も見ましたよ。まさか!」 「そうだ、もう5分でも早くあそこを通っていれば、俺が巻き込まれていたんだよ。」 「そ、それって。もしかして、部長がシャツのシミ抜きに時間を取られてなかったら、巻き込まれたかもしれなかったんですね?」 「そういうことになるな。」 「それってやっぱり奥様に守られてるんじゃないですか?だって、このタイミングでシャツが汚れてるだなんて。死んだ奥様の意思を感じずにはいられないですよ。」 「俺も、そう思って、妻に感謝したんだ。俺を守ってくれて、ありがとうって、口をついて出たよ。」 「本当にこんなことって、あるんですねえ。」 俺がひとしきり感心していると、俄かに部長の顔が曇る。 「俺が、妻に感謝の気持ちを伝えたその直後に、盛大な舌打ちが耳元でしたんだ・・・。」 「えっ?嘘でしょう?空耳かなんかじゃないんですか?」 「妻の家計簿を見つけたんだ。そこには、クリーニングの領収書が挟まっていた。」 「は?」 「つまり、あのシャツは、クリーニングに出されていた。」 「じゃあ、何故汚れが?」 「なあ、こうも思えないか?5分なんて、誤差の範囲内だ。」
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