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事の発端
いままでのあらまし。
昨日曽祖母の葬式にて、我が家が定期的にお世話になっている神社の神主から孫の子守を押しつけられた。
結果、『悪霊退治したい!』という彼女の我儘により、巷で噂の心霊スポット〈死霊の旅館〉へと強制連行されてしまった。
なお、
『四時四分から四時四十四分までの間、旧森田村の最奥にある廃旅館の一室に大きな鎌を持った悪霊が出る。その鎌で斬られた者は漏れ無く死す』
というのが噂の中身だ。
そしてそこの寝袋に入ってるこの彩芽こそが件の神主の孫。
昨日が初対面なのでそれ以外のことは私も知らない。
「すー……すー……」
……いつの間にか寝てるし。悪霊退治しに来たんじゃなかったの?
「……もういいや。私も寝よ」
蝋燭の火を消し、横になる。
腐った畳が軋み、嫌な匂いを発した。
それは、先程嗅いだ日本酒の匂いによく似ていたけれど、私は我慢して目を瞑った。
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