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今日の夕ご飯はたこ焼きでした
「葡萄酒が救世主の血だというのであれば、日本酒は神仏の涙――身を清めるにおいてはこれ以上に相応しい物は無いでしょう」
銀燭台に座する蝋燭の焔が揺らめき、周囲を幽かに照らしだす。
俯けば所々腐食し黒変した畳で覆われた床に影が墜ち、仰げば老天井がその十数もの大口を開けて嗤う――そんな古びた日本家屋の、とある曰く付きの八畳間にて。
この場に似つかわしくない『お洋服』に身を包んだ彼女は、日本酒入りのワイングラスを見つめて独りごちると、その漆黒の瞳を私に向けた。
「そう思わないかしら? 炎の元素を司る四大天使――我が友ミカエル」
「ソデスネー」
ごめんなさい。何言ってるのかわからないです。
後、私ミカエルじゃなくて美香です。
ただの女子大生です。
ついでに言うなら貴女のお友達になった記憶もないです。
そんな私の建前を字面通りに受け取ったのだろう。
目の前の少女――稲神彩芽は満足げに頬を綻ばせる。
そうして見えた彼女の青海苔塗れの歯を眺めながら私は自分の不運を呪った。
――どうしてこんなことになってしまったのだろうか――
と。
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