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しのぶがいる位置からだと、本のタイトルは見難い。
しかし、視力に自信のある、しのぶには、それは大した問題では無い。
タイトルは、英字で書かれていた。
それも、しのぶには問題になら無い。
けれど、本が逆さまになっていて、とても確認し辛らかった。
(なつめったら、本が逆さまじゃない! ええっと、タイトルは……ハッ……はぁ? ハムレット?)
なつめが手にしているのは、シェイクスピアのハムレットだった。
しかも、どうやら、日本語に訳されたものでは無いらしい事に、しのぶは気付く。
(あの子にシェイクスピアを読む趣味なんてあった? いや、読んで無いわよね、逆さまだもの。一体何がしたいのよ! あの子は!)
なつめは、逆さまの本を立てて広げたまま、ジッと視線をある方へ向けている。
本なんか読んで無い事は明白だった。
なつめの視線の先を、しのぶは確かめる。
そこには、テーブルで読書をする、二人の男の子達がいた。
彼らは、地元で名門校と知られる、高校の制服を着ている。
一人は少し日に焼けた、スポーツでもやっていそうな、とても健康的な感じの男の子で、もう一人は、背は高そうだか、白い肌の、ひ弱そうな男の子だった。
この二人を、なつめは、本はそっちのけで、ジッと見つめている。
ははぁんと、しのぶは思った。
なつめが、何故、自分との予定をキャンセルして、図書館に来ているのか? その理由に思い至った、しのぶはため息を漏らす。
(全く、私との約束をすっぽかして、なつめったら、最悪じゃない。もう、文句の一つでも言ってやらなきゃ、だわ!)
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