第2章 日常1

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 しのぶが、なつめの前に出ようとした、その時、男の子達が席を立った。  なつめも、当然の様に席を立つ。  なつめは、素早くハムレットを本棚に戻すと、出口へと向かう男の子達の後について行った。 (えっ、ちょっと待ってよ!)  しのぶも慌てて自分が手にしている本を本棚へ戻し、既に図書館から出てしまっていた、なつめの後を追う。  追いついた、なつめと距離を置いて、こっそりと、なつめの後にしのぶはついた。  なつめは、というと男の子達の後を真面目な様子で、つけている。  しのぶは、電柱の陰に隠れたり、ポストに身を隠したりしながら、なつめを尾行した。 (ああっ、私は何をやっているのかしら。探偵の調査みたいな事をして)  なつめの背中を、ため息を漏らして眺める、しのぶは、けれど、ここまでついてきて、尾行を止めるのも虚しい気がして、どうにでもなれと、なつめの後を追い続けた。  男の子達は、自分達が後をつけられているとも知らず、書店へ入ったり、ファーストフード店へ入ったりと、寄り道を繰り返した。  彼らの後をつけているなつめも、当然、書店へ入り雑誌を立ち読み、ファーストフード店でハンバーガーをかじり、彼らを見つめる。  そんな、なつめの後をつけている、しのぶも、ファーストフード店ではポテトを食べながら、うっとりした目で男の子達を見るなつめをこっそり見ていた。 (辞書でバカってひいたら、間違えなく、私の名前が出て来るわ) しのぶはため息を漏らした。  男の子達を真剣にストーキングする、なつめもどうかしていると思うけれど、その、なつめの後を必死で追う自分もどうかしていると、しのぶは思った。  一体、この追いかけっこは、いつまで続くのか。  しのぶは、疲れを覚えて、目を閉じる。
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