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なつめのイラついた声が、一層しのぶを焦らせる。
「無い、無い、無い、無い、無い! あああああーっ! どこに行ったんだろう!」
「もう、置いていくわよ!」
「えっ? えっ! 待ってったら! あーっ! あった! ポケットに!」
「全く、何やってるのよ! どんくさい! 早く!」
なつめに急かされ、しのぶは急いで改札を潜る。
チリチリチリーッ! と、電車の出発を告げる音が、駅に響く。
なつめは、「急いで!」と言うと、恐ろしい速さで階段へ向かう。
「ちょっと待って! 待ってってば!」
しのぶがそう言い終えた頃には、なつめの姿は、しのぶの目の前から消えていた。
「…………」
置いて行かれた、しのぶは、少しの間、その場にぼんやり立ち尽くしていたが、やがて、ゆっくりと歩き出した。
そして、男の子達が見ていた物の前で足を止める。
男の子達が見ていた物は、いったい何だったのか? しのぶは、それを確かめたかった。
「?」
それを見て、しのぶは首を傾げる。
(何これ?)
彼等が見ていた物は、ホワイトボードではなかった。
それに限りなく近い物ではあったが、そうではなかった。
それには文字が書かれていた。
男の子達が見ていたものは、それに書かれた、この文字に違えなかった。
しのぶが、不思議そうな顔をして、それを見つめていると、階段から、なつめが降りて来た。
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