第2章 日常1

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 なつめのイラついた声が、一層しのぶを焦らせる。 「無い、無い、無い、無い、無い! あああああーっ! どこに行ったんだろう!」 「もう、置いていくわよ!」 「えっ? えっ! 待ってったら! あーっ! あった! ポケットに!」 「全く、何やってるのよ! どんくさい! 早く!」  なつめに急かされ、しのぶは急いで改札を潜る。  チリチリチリーッ! と、電車の出発を告げる音が、駅に響く。  なつめは、「急いで!」と言うと、恐ろしい速さで階段へ向かう。 「ちょっと待って! 待ってってば!」  しのぶがそう言い終えた頃には、なつめの姿は、しのぶの目の前から消えていた。 「…………」  置いて行かれた、しのぶは、少しの間、その場にぼんやり立ち尽くしていたが、やがて、ゆっくりと歩き出した。  そして、男の子達が見ていた物の前で足を止める。  男の子達が見ていた物は、いったい何だったのか? しのぶは、それを確かめたかった。 「?」  それを見て、しのぶは首を傾げる。 (何これ?)  彼等が見ていた物は、ホワイトボードではなかった。  それに限りなく近い物ではあったが、そうではなかった。  それには文字が書かれていた。  男の子達が見ていたものは、それに書かれた、この文字に違えなかった。  しのぶが、不思議そうな顔をして、それを見つめていると、階段から、なつめが降りて来た。
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