第2章 日常1

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 しのぶがブランコを漕ぐ度に、キィキィとブランコが音を鳴らす。  その音が、なんだか寂し気に思えて、しのぶはブランコを止めてカバンを拾うと、カバンを開け、一冊の文庫本を取り出した。けれど、それを手に取ってから、それを、もう全部、読んでしまった事を思い出す。  しのぶは目を瞑り、うーんと唸り声を上げる。そして、目を開き、立ち上がると、文庫本をカバンにしまった。 「図書館にでも行きますか!」  そう言って、我ながら良い考えだとニンマリ笑い、しのぶは図書館を目指し、公園を後にした。  図書館へは、バスに乗って行く。  なかなか来ないバスをバス停で待つ間、しのぶは数人のクラスメイト達とすれ違った。  なつめが自分に頭を下げている所を見られていた、しのぶは、何だか気まずい気持ちになって、クラスメイトが横を過ぎて行く度に、スマートフォンを見ているフリをした。  そんな事をしている自分を、しのぶは、ちょっぴり情けなく思う。 (もうっ! 何で私がこんなに気まずくならなきゃいけないのよ? これも全部、なつめのせいよ! あの子ったら、一体なんだっていうのよ?)  なつめに対しての怒りが込み上げて来た、しのぶは、険しい顔で、バスの時刻表を睨んだ。  来ないバスにも、しのぶはイライラしていた。  しのぶは時刻表と、スマートフォンの画面に浮かぶ時間を伝える四桁の数字の列を交互に見る。 (もう少しでバスが来そうだわ)
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