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しのぶが、そう思って顔を上げた、その瞬間、やって来たバスが、しのぶの、目の前に、乱暴な音を立てて止まった。
バスから、客が降り切ると、入り口のドアが開く。
バスを待っている客は、しのぶ一人だ。
しのぶが乗り込むと、バスは素早くドアを閉めて、走り出した。
バスに揺られながら、しのぶは、ぼんやりと、窓に流れる景色を見た。
なんの変わりも無い、町の景色。
しのぶは、その景色に溶け込んだ、ソレに、目を止めた。
しのぶの、目は、肩を並べて楽しそうに歩いている二人の女の子を見付けて、彼女達を追っていた。
しのぶと同じ制服を着た女の子達。
仲が良さげに笑い合う、その二人の姿は、数秒で窓の景色から消えた。
(なつめが、予定をキャンセルしなかったら、私だって……)
しのぶは、こっそりとため息をついた。
乗客は、しのぶの他に二人しかいない。
車内はとても静かだ。
図書館までは、十五分程かかる。
読む本も無いし、図書館に着くまで、何をして時間を潰そうかと、しのぶは悩む。
暇潰しになる物など何も無いと分かっている癖に、カバンに手を突っ込み、中を探る。
(幾ら探しても、何にも無いのよね)
しのぶは、諦めて、再び、窓の外を見た。
過ぎていく景色を、目を細めて見ながら、しのぶは、さっきの、仲良し二人組の事を思い出していた。
(あの子達、これから何処かに遊びに行く所よね、きっと。あんなに楽しそうにしちやって、二人で、馬鹿みたいに笑っちゃって……)
しのぶは、大きくため息を吐いた。
彼女達のことを羨ましく感じている自分がいる事を、しのぶは知っている。
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