第2章 日常1

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 しのぶ自身も、なつめの事を親友だとは思っている……けれど、なつめの気紛れや我儘に触れる度に、なんで私はこの子と友達でいるのだろうと思った。 (でも……憎め無いのよね、あの子の事)  そう、しのぶは、なつめの事を切る事は出来ない。 「助けてしのぶ」 「何とかしてしのぶ」 「ゴメンね、しのぶ」  なつめにそう言われると、しのぶは許してしまう。  放って置けないと思ってしまう。 (腐れ縁ってこの事かしら?)  そう思って、しのぶは苦笑いした。  しのぶが、こうやって、アレコレと考えているうちに、バスの運転手の掠れた高い声は目的地を告げる。  しのぶは慌てて、降りると書かれたボタンを押した。  この市立図書館は、しのぶの、お気に入りだ。  ここには、広い館内に見合った沢山の本が有る。  司書が頑張っている様で、新刊も次々入る。  しのぶは借りていた単行本の返却を済ませると、獲物を求めて館内を歩いた。  ハードカバーの分厚いヤツでも読んでやろうか、少し気取って純文学というのも一興かもしれないと、ワクワク気分で、しのぶは本の背表紙を観察する。  そして、しのぶは、そういえば、デュマのモンテクリスト伯を途中までしか読んでいなかったと思い出し、海外文学のコーナーへ移動する事に決めた。 (あの話、出来れば巌窟王のタイトルで読みたいけど、ここだと巌窟王は児童文学の上下巻の物しか無いのよね。別にそっちでも良いけど……)
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