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行列の先に
この日、郊外に住む少年は家の近くで行列を見つけた。その行列は人々が一列にキレイに並んでいて、先頭も最後尾も見えなかった。そしてゆっくりと進んでいた。並んでいるのは殆どが年配の人で、五十代や四十代、三十代くらい人は少なかった。ごく稀に青年や子供がいて、ごくごく稀に赤ん坊までもが並んでいた。
少年はそんな行列をじっと見ていた。そして『行列の先に一体何があるのか?』が気になって、行列が進む方に走って見に行った。だが、いくら走っても行列の先頭にたどり着くどころか、先頭さえ見えない。少年は疲れてその場に座り込んだ。そして行列に並んでいる人に『何の行列に並んでいるの?』と聞いてみたが、誰に聞いてもその行列の先に何があるのかを知っている人はいなかった。少年は日が暮れてきたので、この日は諦めて家に帰る事にした。
少年は翌日も同じ所に行ってみた。そこにはやはり行列があった。だが、この日の行列は昨日とはずいぶんと違っていた。まず列が昨日は一列であったのに今日は五列もあったのだ。並んでいるの人も老略男女ありとあらゆる人がいて、とにかくすごい数の人が行列に並んでいるのであった。そして何より昨日よりも行列に並んでいる人たちの進むスピードが速く、小走りくらいのペースで行列が進んでいくのだ。少年はその異様な光景に恐怖を感じ、この日は逃げるように家に帰った。
次の日、行列はさらに大きく長くなっていた。少年の家のすぐそばまで列は迫っていて、その様子は家の中からも見る事が出来た。そして行列は全速で走るよりも速いスピードで進んでいた。そんな様子を恐る恐る家の中から見ていた少年もいつの間にか列の中にいた。列は人でギュウギュウで、ろくに動くこともままならない。行列はどんどん進んでいく。少年はその流れに抗うことも逆らう事も出来ず、行列の波に押し流されていく。少年はそのさなか、昨晩の父親が言っていた話を思い出した。『戦争が激化して来ていて、街のついそこまで戦場が広がって来ている。』少年は“行列の先で何が待っているのか”がハッキリと分かったのであった。
終
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