1.半馬の少年

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1.半馬の少年

 広大な北海道の大自然の中に、年季は入っているが凛とした佇まいの馬小屋があった。  柔らかな草をベッドに、可愛らしい牝馬と寄り添い眠る立派な(たてがみ)をした雄馬がいる。眩しい朝の光が射し込み、朝が来たことに気がついた雄馬は大きな身体を起こした。  朝日に照らされたその鬣と身体はやや青みを帯びた黒で、他の馬にはない特別な輝きを放っていた。  その雄馬の身体は徐々に縮んでゆき、やがて二足歩行の人型となった。 「ああ、もう朝か。素敵な時間をありがとうハニー、また今夜な」  馬の時と同じ、藍色寄りのふんわりとした黒髪と大きな瞳をした少年は、先ほどまで寄り添っていた牝馬の目元に口づけすると手すりにかけてあったタオルを腰に巻いて馬小屋を出た。 「さーて、今日も元気に人間やりますかー!」  牧道(まきみち)青馬(あおま)、十五歳、花の中学三年生は、夜は馬、朝は人間の生活を送る半馬(はんま)と呼ばれる特殊な人間であった。
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