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3.秘密がバレた日
青馬は階段の壁によりかかるようにして、重い身体を抱えながら一階の保健室に向かった。
「可愛い女の子に送ってほしいのは山々だけど、そうはいかねえんだよな……」
青馬は滅多に体調を崩さないが、小学生の時に一度だけ高熱を出し学校を休んだことがあった。その時、夜になっていないにも関わらず馬になってしまったのだ。周りに家族しかいなかったため特に問題はなかったが、今は状況が違う。学校で突然変化してしまえば誰かに見られるわけにはいかないので、一人で保健室に行くことにしたのである。
「もしかしたら体調を崩すと馬になっちまうかもしれねえからな……まあ、大丈夫だとは思うけど。一応、気をつけねえと、な」
静まり返る廊下で独り言をこぼしながら、ようやく保健室にたどり着いた青馬は、クリーム色のドアをそっと開いた。
窺うように頭を左右に動かしながら中に入ると、そこには誰もいなかった。保健の先生は留守にしているらしい。
青馬はホッとすると三台並んでいるうちの一番窓際に近いベッドに行き、腰を下ろした。
「とりあえず横になってたら治るだろ」
そうつぶやいた青馬だったが、身体がふわふわあたたかくなるのを感じるといよいよ冷静ではいられなくなってくる。なぜならそれはいつも馬から人に、人から馬に変わる際の感覚だったからだ。
そして青馬の嫌な予感は的中。
すぐそばにあった鏡に映った自分の姿が目に入ると急いでカーテンを閉めた。
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