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「やべえ耳出てる! どうしようどうしよう今から家に帰るか!? でも途中で誰かに見られたら――」
青馬が小声の超早口で慌てふためいていると、保健室のドアが開く音がする。
ドキリとした青馬は心の中で「やべえ!」と叫びつつ口にチャックをした。
「……牧道?」
声変わりがすっかり終わったような澄んだ低音が青馬の苗字を呼ぶ。
――この声……日暮か?
先ほどと同じ問いかけの再来に、青馬はすぐに訪問者を把握した。
「牧道? いないのか」
カーテンの内側で必死に息を潜める青馬だったが、努力も虚しく身体は徐々に馬へと変わってゆく。
ベッドに隠れようとしても青馬レベルの雄馬が収まるスペースはなく、パニックに陥る。
おそらく心配して様子を見に来てくれたであろう光に感謝しつつも、今だけは来てほしくなかったと脳内で盛大に意見する青馬。
しかしどれだけ青馬が焦ろうと現実が変わるはずもなく……。
光は奥のベッドのカーテンだけ閉まっていることに気づくとそこに近づいた。
気配を感じるのに返事がない。もしや青馬が倒れているのでは、と勘違いした光は勢いよくカーテンを開けてしまった――。
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