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4.伝説の駿馬
パカパカパカ……
静かに歩いても隠せない蹄の音が校内に響く。
光は保健医がいないことと、授業中で生徒たちが廊下に出ていないことを確認すると、馬になった青馬を誘導して保健室から出した。
校庭には体育をしている生徒たちがいるため、光は青馬を校舎の裏門に連れていくことにした。青馬は光の指示に従い大人しく隣を歩いている。
誰にも会わないまま裏門に到着した二人……一人と一頭、がここまで来ればもう大丈夫、と気を抜いた瞬間だった。誰かに見られていると感じた光がその先を見ると、校舎裏に仲良く座っているバカップルがいた。動きを止めた光の視線を追った青馬も異常事態に気がついた。
――な……なんでお前らこんなところでサボってるんだよーーっ!?
思わず吠えそうになるのを堪える青馬。
そこにいたのはスケッチブックでお絵描きをしている響と橙子だった。二人は座ったまま光と青馬を見て動きを止めていた。
「……えーと……馬、だね……」
「馬……だな」
「――っていやいや!? 日暮くんどうしたのその大きな馬!! なにがあったの!?」
最初にハッとした橙子が素直なリアクションを取るが、光はあくまで冷静さを保ったままさらりと言い放つ。
「ああ、これは迷い馬だ」
「……迷い、馬――……!?」
響のメガネがずれ、橙子の手からペンが落ちる。
一同の間を爽やかな風が吹き抜けると、響と橙子は顔を見合わせた。そして次に光を見上げた時には、橙子はへらっと笑い、響はうんうんと頷いていた。
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