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青馬の一日は馬小屋から始まる。朝日の眩しさや小鳥のさえずり、そしてその夜連れ添っていた牝馬の毛繕いが目覚ましとなる。
「おっはよー!」
「おはよう青馬、朝ご飯食べていきなさいよ」
「今日はいいや! ちょっと朝寝坊しちまったし、シャワー浴びたらもう出る!」
「あらあら、騒がしいこと」
腰に巻いたタオル一枚で広い平家を走り回り浴室へ向かう青馬に、家族である父や母、妹が声をかける。朝起きたらすぐにシャワーを浴びるのも青馬の日課であった。
「きゃ、お兄ちゃん!? もー、タオル一枚で走り回らないでっていつも言ってるでしょ!」
「悪りぃ悪りぃ! 凪葉ももう出ねえと遅刻すっぞ! また大好きな健人くんの夢でも見て寝坊かー!?」
「う、うるっさい!」
青馬がからかうように妹が気になっているクラスメイトの名前を出すと、すれ違いざまに背中を叩かれた。
急いでシャワーを浴びた青馬は用意されている学ランに着替えると、自分の部屋にある紺色の鞄をたすき掛けにしスニーカーを履き家を出る。
「父ちゃん母ちゃん行ってきまーっす!」
「おう、青馬! ……わかってんだろうな、今日も?」
小麦色の肌をした短髪の父に言われ、青馬は玄関で振り返ると敬礼をした。
「今日も言わない聞かれない見られない!」
「よーし、じゃあ行ってこい!」
「おう!」
青馬は学校に通い始めてから続いている父とのやり取りを終えると急いで家を出た。
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