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5.暗い過去
「たっだいまー!!」
「あれ、青馬の声? 学校はとっくに始まってるはずだけ、ど……」
青馬の声を聞き玄関に駆けつけたのは、丸みを帯びた体型をしたお団子ヘアーの女性だった。
母は帰宅した息子を見るなり、真っ青な顔で固まった。
「き……きゃああああああ!!」
「どうした静葉!? ……あ、青馬!?」
母の奇声に急いでやってきた父もまた顔色を悪くする。
それもそのはず。青馬は光の学ランの上着を腰に巻いただけでほぼ裸のような格好をしていたからだ。その状態を見た父はなにがあったのかをすぐに悟り、悲壮な面持ちになった。
「……お前、まさか学校で……」
「馬になっちまった!」
あっけらかんと言って退ける青馬に、やっぱりか、と思った父は頭がくらくらしてきた。
「なっちまった、じゃないだろう。だからあれほど気をつけろと。今までうまくいっていたのに……」
「でもなんかいきなり体調が悪くなってさ、保健室行ったらすぐ馬化しちまって……で、そこをこの日暮に見られちゃったわけ! こんなことは初めてだから仕方ねえって!」
次々と明かされる信じ難い事態に、静葉は口をぱくぱく動かしながら夫の肩を揺らした。
「見られたって……どうしましょうあなた、青馬が……」
「大丈夫だって! 日暮は俺を助けてくれたんだよ! うまく学校から出してくれて、一緒に帰ってきてくれたんだって!」
青馬のセリフに父母は驚きの表情をし、お互いに顔を見合わせたあと光を凝視した。
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