70人が本棚に入れています
本棚に追加
青馬はいったん自室に戻ると白い長袖シャツと水色のジャージパンツに着替える。それから光を居間に案内すると、横長のローテーブル周りに置いた座布団を勧め、自身もその隣に腰を据えた。
二人に向かい合う形で父、母、祖父、祖母が座り、焦茶色のテーブルには煮物や炒め物などの大量の料理が並べられた。
「さあさ食べて」と促す母に取り皿と箸を渡された光は、少し頭を下げ遠慮がちにそれを受け取った。
「全部、野菜だ。すごい量だな」
「ん? そっかあ? うちはいつもこんなんだぞ。じいちゃんばあちゃんが畑でいろいろ育ててっから」
光は目の前を埋め尽くす品の数々をしげしげと眺めた。
「――あ、もしかして野菜苦手だったとか!? それかスポーツ選手だから食事制限してるとかか? ならマジで無理して食わなくていいからな!」
「いや、野菜は大丈夫だ。好きだし、カロリーも低いから」
「そっか!? ならよかった! いっただっきまーす!」
元気よく挨拶をし大きな口でもりもり食べ始める青馬を見て、光も手を合わせると少しずつ食事を始めた。
「日暮くん、なにかスポーツをしてるの?」
「そうそう、サッカーがすげえうまくてU-15ってやつに選ばれたんだって!」
「ええ、そりゃすごいね」
「いや、別にすごくは……」
持て囃されると反応に困る光は、視線を外して箸を動かした。
「またまたすごい人ほどそうやって謙遜するんだからねえ。凪葉がいたら大騒ぎしてたところだわ。イケメンでスポーツ万能だなんて!」
「……凪葉って?」
「俺の妹! 今は学校行っていねえけど、ませた小六!」
「そうか」
その話を聞いて、ふと妹も馬になるのか気になった光だったが、探るのはよくないと思いそれ以上言うのをやめた。そんな光の気持ちを察した青馬は自ら馬の話に触れる。
最初のコメントを投稿しよう!