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「そうそう、気になってるだろうから言っとくけど、半馬の寿命はたぶん馬である時間が長ければ長いほど短いんだ。うちのじいちゃん父ちゃんは確か六、七歳くらいから馬化しなくなって、それから今までずっと人間のままなんだって。生まれてから一日のほとんどを馬で過ごしてた半馬はみんな十代で亡くなってるらしい。親戚の兄ちゃんとか、うちのじいちゃんの弟たちもそうだったみてえ」
「そう、なのか……」
光はその話を必死で頭で噛み砕きながら思考を巡らせた。
今現在、十五歳になってもまだ馬と化してしまう人物を前に、悪い考えだけが膨らむ。
――なら、お前は?
そんな言葉が喉まで出かかって飲み込んだ光だったが、目は口ほどにものを言うとはまさにこのことだ。
細い眉を寄せながら黙って見つめてくる光に、青馬はキョトンとした後で盛大に「ぶーーっ!」と吹き出した。
シリアスな場面にそぐわない青馬の反応に、光は「な、なんだ!?」と驚きの声を発する。
それでも青馬は「アッハハハ!」と腹を抱えながら笑っていた。
「今のどこに笑うとこがあったんだ」
「だって日暮すげえわかりやすいんだもん、『じゃあお前はどうなんだ?』って顔に書いてある!」
「は!? な……」
「日暮ってクールそうに見えて実はすげえわかりやすいんだな!」
「か、からかうなよ」
そんなに表情に出ていたのかと焦った光は、反射的に肌が熱くなるのを感じた。
初めてかけられた言葉に、どうすればいいかわからず戸惑ってしまったのだ。
目を逸らし顔を隠そうとする光に、青馬は彼の不器用さを受け取っていた。
「悪りぃ悪りぃ! ……うーん、そうだな、俺は未だに半分きっちり馬だからなー。ある日突然死んじまう、なんてこともあり得るかも?」
「……縁起でもないこと言うなよ」
「でもさー、日暮!」
「なんだ」
「考えてもどうしようもねえこと、悩んだって仕方ねえじゃん! なら悪い方に考えるより、生きてる今を楽しんだ方がいいって!」
青馬の心は雲ひとつない青空のように澄み渡っていた。
光は青馬という名は彼にピッタリだと思うと同時に、自身の名が周りを明るく照らすという意味の光だということを恥じた。
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