6.雲のない青空のように。

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「マジで!? 来て来て! 俺馬だけど! 言葉はちゃんとわかるから!」 「そうだな」  喜びで興奮する青馬を見ると、光は安堵を覚えながら言ってよかったと心から思えた。 「そうだ! ここからさ、冬になるとすげえでかい馬の星座が見えるんだよ! 羽が生えた馬……ペガスス座、だったかな?」 「そうなのか」 「次の冬になったら一緒に見ようぜ!」 「わかった」 「あ、そうだ。日暮、俺の名前……あ、やべ、また服破ったって母ちゃんに怒られちま――……」  あっという間に時は過ぎ、会話に夢中だった青馬は馬小屋に戻るのに間に合わず変化する。光は急いで周りに誰かいないか確認したが、小高い場所にある青馬の家からは他の家屋すら見えないため一安心した。  春空の夜七時。まだ薄明るいながらも星や月が光り始めていた。光は再び目の前に現れた大きく凛とした馬と対面した。  今朝は驚きのあまりよく見る余裕もなかった光だったが、初めて冷静に目にした青馬の馬の姿はあまりに美しくほのかな切なさを誘った。 「青馬、俺のことも名前で呼べよ」  光は青馬が伝えかけた言葉を汲み取り答えると、手触りのいい毛並みを撫でた。すると青馬は嬉しそうに光の頬に頭を寄せたのだった。
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