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7.青馬の夢
それから数日後、青馬たちは学校の遠足でバスで一時間ほどかかる動物園に来ていた。
「光、一緒に回ろうぜー!」
「ああ」
「ほんと急に仲良くなったわよねあなたたち」
「そうそう、光はもう身内みたいなもんだからさ!」
「む……小一からの付き合いの俺たちを差し置いて」
「ふふ、響ってば妬かない妬かない!」
自由時間が始まるや否や光を連れ出す青馬を響と橙子は見守っていた。
まだまだ動物園で楽しめる年齢の中学生たちだが、今の光は複雑な気持ちだった。光は動物は好きな方ではあるが動物園に特に心躍るわけでもなく、今までただなんとなく学校の行事や家族に誘われ付き合うくらいだった。それが青馬が半馬だと知ってから急に世界が変わった。囚われた動物たちを見ると重い気持ちになってしまい、当の青馬はもっと複雑な心境だろう、と思った光だったが……。
「やべー! ライオンかっけー! 象のフンでか!」
心配されている本人は光の繊細な気持ちをよそにとても楽しんでいた。
「キリン首なっげー! あっ、子供いるじゃんすげえ可愛い!」
「青馬、声が大きい。あまり走り回るな」
「へへ、俺のが光より足は速いもんなあ!」
「陸上部に入れば世界も狙えるんじゃないか」
「うへえ、競走はもう馬だけで十分! ……おっ」
はしゃぎ回って光に注意されていた青馬はあるものに気がつくと、そこ目掛けて一目散に駆けていく。
そこ、とは馬たちが飼われている広い庭だった。
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