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「人間の状態でも馬の言葉は話せるのか?」
「話せるぞ。人間の口なら細かい音を出せるからな。ちなみに今は俺の子を生んでくれないか聞いてた」
「こ、子供……?」
「そうそう、俺馬だともう十三頭の父親だから。まあ種馬ってやつだけどな」
予期せぬ言葉に、光は長いまつ毛を瞬かせる。
人間と馬では寿命が違うため当然といえば当然のことだが、普通の十五歳の光にとっては親の立場など想像もつかなかった。
「それはすごいな。その……子供たちは馬なのか?」
「母親が馬なら子供も完全な馬だぞ」
「なるほど」
「しかしやっぱり女の子はいいよなー! 男と違って柔らかいし、可愛いし、優しいしな!」
青馬は自分の知らないことをたくさん知っている。童顔で小柄なのに、時折大人びて見えるのはそのせいだろうか。
ふと距離を感じる横顔に、光の胸がチクリと痛んだ。
「……あ、て言っても俺人間としては経験値ゼロだけど」
パッと光を振り向き、にししと悪戯っ子のように笑ってみせる青馬。
その事実と表情に、光の感じた棘がポロリと抜け落ちる。すべては無自覚に、成り行きのまま過ぎていった。
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