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「大会が終わった後なら遊べる。青馬も明るいうちなら大丈夫だろ? ……夏休みの最後だから八月後半にはなっちまうが」
「え、マジで!? 遊んでくれるのかー!? 俺はいつでもいいから光に合わせる!」
「八月二十六日辺りでいいか」
「いい、いい! んじゃあそこは家の手伝いも放棄すっからって父ちゃんたちに言っとくな!」
「ひゃほー!」と両手を振り上げ歓喜する青馬に、光も無自覚に笑みをこぼす。そんな光を見て、青馬は嬉しくなってまた笑った。
――光のやつ最近よく笑うよなあ。相変わらず俺以外には仏頂面だけど。
あまりそこを指摘すると怒られるため、青馬は密かに自分の中だけで完結させた。
担任から明日から始まる夏休みの宿題や注意点など説明が終わると、生徒たちは一斉に立ち上がりきをつけして礼をした。
「光は部活か?」
「いや、今日は自主練だけ。明日からクラブチームでの本格練習が始まるから、最後の休憩みたいなもん」
「そっか、いよいよだな、がんばれよ!」
二人はもう当然のように足並みを揃え教室を出ていく。
青馬に応援されていると思うと、光は全身がむず痒くなるような、力がみなぎるような、形容し難い現象に見舞われた。
――不思議だ。青馬と話すと自然に言葉が出てくる。まるで今までの自分じゃないみたいだ。
光はすっかり青馬に気を許しており、自分が生まれ変わったかのような錯覚に陥っていた。好きではなかった学校も毎日通うのが楽しくてたまらなくなり、余計なことを考えなくなった。
――しかし、夢は突然覚めるものである。
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