71人が本棚に入れています
本棚に追加
「……おっ、日暮じゃねえか! おはよう!」
青馬は予想外に早く人が来たことに一瞬驚いたものの、すぐに切り替えて元気に挨拶をした。しかし挨拶された方の日暮光は、青馬の溌剌とした対応に戸惑っていた。二人は同じクラスで面識はあるものの、特に親しいわけではなかったからだ。
「……はよ」
光は小さく返事をすると、青馬とは反対側の廊下に面した一番後ろの席に座る。
「早くねえ? もう朝練終わったのか?」
「……俺は別メニューだから」
「そうか! あ、なんかすげえサッカーのメンバーに選ばれてなかった? それが理由?」
「まあ……練習しすぎだから、少し休めって」
「おうおう、そっかそっか! 休息は大事だからな! 俺も競走馬の時は……」
怪訝な顔の光を見てハッとした青馬は、口から飛び出しそうになった言葉にストップをかけた。そして怪しまれないよう笑顔を作ると速やかに話題を変える。
「すげえよな! 毎日毎日かかさず朝練!」
「……牧道は、いつもこんなに早く来てるのか?」
「そうそう! 俺すっげー早起きだからさ! 家にいても仕方ねえし、さっさと学校来てんの」
「……へえ」
その後も色々と息つく間もなく話す青馬を、光はぼんやり眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!