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「あ、あの……日暮、くん」
高く、可愛らしい声が光の名を呼んだ。
靴箱で上履きからスニーカーに履き替えていた青馬と光がその声に振り返ると、そこには小柄で色白の女生徒が立っていた。その頬は僅かに紅潮している。
「あ、あの、あの、いつも、サッカー、応援、してます。これ……よ、よかったら、読んでください……!」
震える声で言いながら女生徒が思いきって光に手紙を差し出した。
すぐに状況を察した青馬は、今時手紙か、と思いつつも、案外光にはこの方が好印象かもしれないな、とも感じた。
心の中でヒュー、と口笛を吹きながら気を利かせて光から離れようとした青馬だったが、光がそれを止める。
「なにやってるんだ、青馬」
「いや、こういう時は二人きりにしてあげるのが優しさってもんだろうが!」
「そんなことしなくていい。悪いけど、俺、こういうの受け取れないから」
光からの冷たい返事に顔を上げた女生徒の目に涙がいっぱい溜まっていく。それを見た青馬はなにかフォローしようとしたが、いい考えが浮かばず焦るだけだった。
「あの、す、好きな人がいるん、ですか?」
「……あんたには関係ない」
自分といる時には想像もできない光の突き放した態度に、青馬は一瞬言葉に詰まった。
「ひ、光、その言い方はちょっと」
「なにが悪いんだ」
「いや、可愛い子じゃん? 好きな子がいないなら試しに付き合ってみてもいいんじゃねえ? とか、はは」
「迷惑なだけだ」
「日暮……!!」
そこで気まずい空気に飛び込んできたのは、丸メガネの少年だった。
響は怒りのオーラを纏わせながら大股で床を踏みしめ光に接近した。
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