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なにも悪いことをしていない上に聞きたくもない話を聞かされるくらいなら、最初から仲良くしなければいい。と、光は再び自分から壁を作るようになった。
そんな中、光は中学ニ年の時同じクラスの女子に告白された。もしかしたら、付き合ってみれば異性のよさがわかるかもしれないし、周りにいる男子たちのように『普通』の話題も楽しいと思えるようになるかも知れない。そう考えた光は彼女と付き合うことにした。
しかし光は変わらなかった。
相変わらずサッカーばかりをし、彼女との約束など面倒なだけで異性のよさなどさっぱりわからなかった。
手を繋いただけで三ヶ月が過ぎ、痺れを切らした彼女が光を家に誘うと、キスをしようと誘った。光はすぐに無理だと思った。したい、という欲がまったく湧かなかったのだ。それなのに強引に唇を近づけてきた彼女を、光は思い切り突き飛ばしてしまった。驚きと痛みで泣きじゃくる彼女に光は「体調が悪いから」と下手な言い訳をして家を出ると、帰宅してから何度も嘔吐した。その後その女子は親の転勤で引っ越しをしたため、もう会うことはなくなった。
異性のよさを知るつもりが、光は思っていた以上に深刻である自身の問題と直面することになってしまった。
――女性を好きになれない。
かといって男性が好きなわけでもない。
ならば、自分は一体何者なのだろう。
世間の枠に分類できない、当てはまることのできないはぐれものの虚脱感が、常に光につき纏っていた。
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