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「日暮くん。あたし、日暮くんのことが好きで」
「悪いけど、そういうの興味ないから」
それからの光は言い寄る女子を片っ端からフッた。自分のことをよく知りもしないのに軽々しく好きだと口にする女子たちが、光にはひどく汚らわしい生き物に見えた。
女子に告白される度、男子たちの話題に嫌悪する度、光は責められているような気がしてならなかった。
『おかしいのはお前だよ。そんなお前誰も認めない。ちゃんと普通になれよ』
そう、自分の中にいる誰かに怯えるしかなかった。
響が言った通り、光はサッカーのクラブチームの仲間ともうまくやれていなかった。サッカーの技術は抜きん出ているものの、光には協調性がなかった。サッカーはチーム競技だというのに、一人でなんでもしようとする光に嫌気をさしたチームメイトたちはやがて彼にボールを回さなくなった。
光が青馬に試合を観に来てほしくないと言ったのは、そんな情けない自分を見せたくなかったからだ。
本当は青馬のように周りの人間たちに慕われて、堂々とプレーを披露したかった。
観客席に青馬がいてくれたら、どれほど心強いかとも思った。
しかしそんなことは叶わない。
少なくとも今の光には、手の届かない夢のようだった。
「なんで俺は、あんな言い方しかできないんだよ……」
光は家に帰るなり自室に閉じこもり、ドアを背に座り込んでいた。別れ際に見た青馬の辛そうな表情が、光の脳裏に焼きついて離れなかった。
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