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「青馬はなにも悪くないのに、変なのは俺なのに」
先ほど青馬に言われた「付き合ってみれば」という言葉が光の胸を貫き、あまりにも痛かった。
青馬が馬として複数の子を持つ父だということなどずっと前から知っていたはずなのに、人と馬は違うのだから、青馬ならきっと自分を理解してくれるなどと光は期待してしまっていたのだ。
――青馬は、ただ半馬であることを知った上で仲良くしてくれる友達ができたことに喜んでいただけなのに……。俺はあいつの純粋さを利用して、そばにいて、いい気になって……俺だけは特別だって……。勝手に期待して、勝手に裏切られた気になって……失望した。どこまで自分勝手なんだよ、俺は。
光は青馬を目で追うようになっていた。
ずっと一緒にいたいと思った。
人でも馬でも、会いに行ってともに時間を過ごすだけで満たされていた。
しかしいつからか青馬の髪に、頬に触れたいと思い始めた。それは青馬が馬である時に撫でる癖の延長なのだと勘違いしていた。
人としては友達で、馬としては愛でるだけの対象ならば。
今日のショックは?
青馬のことを考えて眠れない夜は?
会う度高鳴る胸の鼓動は?
ひどく独占したいと願う綺麗事では済まないこの熱い想いは――?
それがひとつの答えを導き出していることに、光はやっと気がついた。
「……そうか、俺、あいつのこと」
以前光が嫌悪し、理解できないと思っていた人間の感情の極であった。
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