9.光

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「ふーん、ならいいけど。もしなにかあったならちゃんと話した方がいいよ? 一番の友達なんだから大事にしなきゃね」  奥から「凪葉ー!」と呼ぶ母の声が聞こえ、返事した彼女がその場を後にする。  凪葉が去ったドアを、青馬はぼんやりと眺めていた。 『一番の友達』……妹が残した言葉を、青馬はしばらく反芻していた。  家族ではなく、恋人でもない。  同性でもっとも親しい仲ならば、親友という呼び名が適しているはずだ。  しかし青馬にはしっくりこなかった。  家族のように居心地がよく、友達よりも大きな存在。自分と光の関係をうまく表現する文字が浮かばなかった。  確かなのは、どうしようもなく気になるということ。  伸ばした手を傷ついた獣のように跳ね除けながらも、寂しげで助けを求めているような光の瞳。青馬の中で何度も繰り返し再生され、放っておけなくさせる。  その時不意に、青馬が顔を顰め右足を押さえた。 「痛て……」  日に日に増す、全身が軋むような痛み。  誰にも言えない秘密を、光も抱えているのだろうか。  だとすれば、その苦悩を分かち合える誰かが、自分であったらいいのに。  青馬は家族にもひた隠しにしている不調を押して、光に連絡しようとスマートフォンを片手に取った。
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