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10.馬になった少年
あれから一ヶ月が経ち、夏休みは終わりに近づき始めた。夏休みに入る前日、あの気まずい事件があってから光は青馬と連絡を取っていなかった。青馬からは何度か連絡が来たものの、光はそれに返事をする勇気がなかった。そのままサッカーの大会に入ったが、チームメイトとの溝をそのままに、光の精神状態が悪かったのも手伝って結果は散々だった。
光は毎日青馬に連絡しようとスマートフォンに文字を打っては、送信のボタンを押せずに画面を消すことを繰り返していた。光が葛藤しているうちにどんどん時は流れ、最後に青馬に会った時に約束した日の前日になってしまった。今日は八月二十五日。青馬と遊ぶ約束をしたのが八月二十六日。それを光が忘れるはずがなく、指折り数えてきたのだ。
青馬に会うのは心苦しかったが、やはり顔を見たいという気持ちの方が勝り、光は悩みに悩んだ末思いきって自分から青馬に連絡をした。
……しかし、それに対しての返事はなかった。
何度も青馬の連絡を無視する形になっていたため、怒らせてしまったのかもしれないと思った光は不安で胸がいっぱいになった。それでも光はあきらめず、返事がないままでも明日青馬に会いに行くことに決めた。
――許してくれるまで何度でも謝ろう。
また以前のように青馬と一緒にいたい。光はそのためならなんでもしようと思った。
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