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「お前そんなに日暮と仲良かったか?」
「朝二人きりでしゃべって仲良くなったからでーす! 今日一日新田くんになるんで。日直もやるんで!」
「お前が仲良くなったと思ってるだけじゃないのか。日暮、どうする?」
急に話を振られ困惑する光だったが、特に断る理由も思いつかない。
教室中の注目を集めた上、いつの間にか青馬に期待を込められた目で見られていることに気づくと、小さく息を吐いた。
「……俺は別に」
「やった! ほら先生、ほーら!」
「お前はもうちょっと落ち着かんか、日暮を見習え」
「しっつれいしまーっす!」
「人の話を聞かんか」
笑いに包まれる中、青馬は鞄を抱え光の隣の机に移動した。
実は青馬は前からこの日暮という少年を気にしていた。クラスの全員……担任教師までが青馬、と下の名前で呼ぶくらい仲良くなっても光だけはそうなれなかったからだ。青馬はなるべく人間と仲良くなれるよう努力をしているのだが、光はサッカーの練習もあり四月の後半になった今でもあまり話す機会がなかった。そのため今朝話したのがチャンスだと思い、青馬は積極的に行動に出ていた。
――日暮は練習で疲れていて授業中に居眠りをするかもしれない。そうしたら教科書で隠してさりげなくフォローしてみよう。
うんうん、と頷きながら心の中で光と仲良くなる計画を立てる青馬だが……現実は思うようにはいかない。
一時間目の授業が進行するとともに、その顔はみるみるうちに青くなっていった。今朝はいつも通り元気だったというのに、どんどん頭痛がひどくなり、気分まで悪くなってきたのだ。
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