2.友達

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 感じたことのない体調の急変に、青馬は冷や汗のにじむ額を机に擦りつけ頭を捻らせた。  おかしい。今朝はなにも食べていないのに悪いものに当たるはずもない。と、そこまで考えが及んだ時、それが悪かったのではと可能性が浮かび上がった。  確かに馬の時は必ず決まった時間に食事を摂っていたため、今まで抜いたことなどない。  習慣と違ったことをしたせいか、原因は定かではないが、とにかく青馬の具合は悪化する一方だった。  ――こんなことなら今朝、馬の状態で草くらい食っときゃよかった……!  切羽詰まって短絡的な思考がよぎる。そんな青馬の異変に気づいた人物が一人いた。   「……おい、牧道、大丈夫か?」  隣から降ってきた優しげな声に、青馬は「へ?」と間抜けな声を漏らしながら顔を動かした。  するとすぐ真横の席から少し身を乗り出すようにして、心配そうな顔をする光と目が合った。 「顔色悪いぞ。……すみません、先生、牧道が体調悪いみたいで」  青馬の不調に気づいた光はすぐに手を挙げ担任に告げた。  フォローするつもりがされてしまった青馬は計画失敗、と思いつつも助かった、と安堵する。 「おお、青馬、ほんと顔が真っ青だぞ。具合が悪いなら早く言え」 「は、はは、はーい」  競走馬の時の癖か、青馬は体調が悪いと感じてもギリギリまで我慢してしまうのだ。
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